2021年、施工管理技術検定制度が見直しへ!変更点や検定内容まとめ
2021年より施工管理技術検定の制度が見直され、技士補の新設、試験基準の変更などさまざまな点が変わります。受検を予定している人も、いつか施工管理技士を目指したい人も、きちんと新制度の内容を把握しておきましょう。
この記事では、新制度の内容と施工管理技術検定の概要についてわかりやすく解説します。
目次
2021年から施工管理技術検定の制度が見直しへ
令和3年(2021年)から施工管理技術検定が新制度へ変更されます。
新制度での変更点は次の4つです。
- 検定名称が変更&「技士補」の新設
- 1次検定(元「学科」)の有効期限が無期限へ
- 1級1次検定が受検可能になるタイミングが前倒しに
- 試験基準が変更
さらに前年までの「学科」合格者には経過措置があります。ひとつずつ順に解説します。
(参考:国土交通省「技術検定制度の改正」より)
「1次」「2次」へ名称変更&技士補が新設
検定の名称が変更され、1次検定(旧「学科」)に合格すると技士補の称号が得られるようになります。
<検定の名称>
新制度 | 旧制度 |
---|---|
「1次検定」→「2次検定」 | 「学科試験」→「実地試験」 |
<付与される称号>
新制度1級 | 付与される称号 |
---|---|
「1次検定」合格 | 1級技士補 |
「2次検定」合格 | 1級技士 |
新制度2級 | 付与される称号 |
---|---|
「1次検定」合格 | 2級技士補 |
「2次検定」合格 | 2級技士 |
なぜ今回わざわざ「技士補」ができたかというと「監理技術者」の専任緩和が目的です。
監理技術者とは建設現場での技術水準を保つために配置が義務付けられている技術者で、1級施工管理技士など特定の資格保持者のみが担えます。
従来、監理技術者は現場を兼任できませんでした。しかし業界全体の高齢化や人手不足により、1人の監理技術者を1現場に専任させるのはなかなか難しい状況に……。そこで「主任技術者資格を有する1級技士補」を各現場に配置すれば監理技術者が2現場まで兼任できるよう制度を変更したわけです。
そしてこの「主任技術者資格」には2級施工管理技士も該当します。
よって2級からチャレンジして1級技士補まで取れれば、1級2次で不合格でも「資格が使える」ようになります。
ちなみに、施工管理技術検定の試験回数は新制度でも変更ありません。
- 1級は年1回
- 2級1次が年2回、2級2次は年1回
機会が少ないため、これから受検を考える人は計画的に勉強しましょう。
1次検定合格が無期限で有効になる
2級、1級ともに1次検定に合格した場合、その後は何度でも2次から受検できるようになります。
従来は、学科試験に受かっても実地試験で2回不合格になると、学科からの再受検が必要でした。
新制度から何度でも2次からチャレンジできるため、再受検のモチベーションが維持しやすくなります。
2級合格で1級1次検定が受検可能になる
2級施工管理技士の資格を取得した人は、1級合格に必要な実務経験がなくても1級1次検定の受検ができるようになります。
新 | 2級2次検定に合格→1級1次検定に合格→(実務経験)→1級2次にチャレンジ |
---|---|
旧 | 2級実地試験に合格→(実務経験)→1級の学科・実地にチャレンジ |
1級2次検定の受検資格に”一定期間の実務経験”が必要な点は変わりませんが、求められる場所が変更されます。
1級施工管理技術検定の受検に必要な実務経験は原則5年と長期間です。2級に合格したら、勉強した知識が薄れないうちに1級1次にチャレンジするほうが楽に進めるでしょう。
1次検定合格が無期限で有効になるのとあわせ、1級へチャレンジしやすい環境が整えられた形です。
試験基準も変更
試験基準も変更になります。
- 従来の実地試験にあった施工管理法の能力問題の一部 → 2次検定の範囲へ移動
- 学科試験の施工管理法に関する知識問題の一部 → 1次検定の範囲へ移動
なお試験方式は従来通り、1次検定がマークシート式、2次検定も大部分は記述式のままです。
合格に必要な勉強範囲そのものが変わるわけではなく、知識が問われるポイントが変わると考えてください。
(参考:一般財団法人建設業振興基金「施工管理技術検定の令和3年度制度改正について」より)
2020年までの学科合格者は?経過措置の内容
では、2020年までに学科試験に合格し、学科免除が受けられるはずだった人はどうなるのでしょうか?
要約すると、次のような経過措置が設けられています。
- 免除期間内に限り、2次検定に合格すれば「技士」の称号を得られる
- 「技士補」の称号は得られない
ちなみに免除期間を過ぎると1次検定からの再受検になってしまいますが、そこで合格すれば「技士補」の称号を取得できます。
施工管理技術検定の概要
「制度が変わるのはわかったけれど、そもそも施工管理技術検定ってなに?難しいの?」という人に向けて、ここからは施工管理検定の概要について解説します。
施工管理技術検定は、国土交通大臣指定機関が実施する国家試験です。合格すると施工管理技士または技士補の称号が与えられます。
施工管理技士とは?
施工管理技士は、”建設工事を安全に、計画通りに進める”ために建設工事の施工計画や工程管理、予算管理などを行う技術者です。現場の職人ではなく、管理・監督の立場の人ですね。
施工管理技士には1級と2級の区分があり、どちらも建設業界でニーズの高い資格になります。
というのも、建設業界では建設業法により次のような定めがあるからです。
- 各営業所に専任の技術者(1級施工管理技士、2級施工管理技士など)を配置する
- 各建設工事現場に主任技術者(1級施工管理技士、2級施工管理技士など)、または監理技術者(1級施工管理技士など)を配置する
法律上、該当する人材がいないと建設会社は仕事ができません。よって施工管理技士の資格保持者は業界で引く手あまたといえます。
施工管理技士は7種類ある
2021年現在、施工管理技士は工事種類で下記7つに分かれ、それぞれに検定が設けられています。
種目 | 指定試験機関 |
---|---|
土木施工管理(1級・2級) | (一財)全国建設研修センター |
建築施工管理(1級・2級) | (一財)建設業振興基金 |
電気工事施工管理(1級・2級) | (一財)建設業振興基金 |
管工事施工管理(1級・2級) | (一財)全国建設研修センター |
造園施工管理(1級・2級) | (一財)全国建設研修センター |
建設機械施工管理(1級・2級) | (一社)日本建設機械施工協会 |
電気通信工事施工管理(1級・2級) | (一財)全国建設研修センター |
(参考:国土交通省「技術検定制度」より)
全種種目で1級・2級の区分があり、さらに検定が1次・2次にわかれます。ただし担当している試験機関が異なるため、試験について問い合わせる際は注意してください。
施工管理技士の受検資格
施工管理技士には受検資格があり、1級と2級2次を受検するには各種目に応じた実務経験が必要です。
必要な実務経験年数は、学歴や保有資格で細かく定められています。
ここでは電気工事施工管理技術検定を例にとって解説します。
<2級電気工事施工管理技術検定>
2級1次は年齢さえ満たしていれば受検できます。
2級1次検定の受検資格 | 試験実施年度において満17歳以上 |
---|
2級2次の受検には下記の実務経験が必要です。
2級2次検定受検に必要な実務経験年数 | |||
---|---|---|---|
区分 | 最終学歴または資格 | 実務経験年数 | |
指定学科卒業 | 指定学科以外卒業 | ||
イ | 大学
専門学校の「高度専門士」 |
卒業後1年以上 | 卒業後1年6カ月以上 |
短期大学 5年制高等専門学校 専門学校の「専門士」 |
卒業後2年以上 | 卒業後3年以上 | |
高等学校 専門学校の「専門課程」 |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6カ月以上 | |
その他(最終学歴問わず) | 8年以上 | ||
ロ | 電気事業法による第一種、第二種または第三種電気主任技術者の免状交付を受けた者 | 1年以上 (交付後ではなく、通算の実務経験年数として) |
|
ハ | 電気工事士法による第一種電気工事士免状の交付を受けた者 | 実務経験年数は問いません | |
二 | 電気工事士法による第二種電気工事士免状の交付を受けた者 (旧・電気工事士を含む) |
1年以上 (交付後ではなく、通算の実務経験年数として) |
(参考:一般財団法人建設業振興基金施工管技術検定「令和3年2級電気工事士施工管理技術検定のご案内」より)
(職業訓練などを受けている人は、年数が短縮される場合もあります。詳細は「受検の手引」をご確認ください)
<1級電気工事施工管理検定>
1級1次検定を受検するには、下表の受検資格のいずれかを満たしている必要があります。
さらに1級の実務経験として「指導監督的実務経験」も1年以上必要です。
1級1次検定受検に必要な実務経験年数 | |||
---|---|---|---|
区分 | 最終学歴または資格 | 実務経験年数 | |
指定学科卒業 | 指定学科以外卒業 | ||
イ | 大学 専門学校の「高度専門士」 |
卒業後3年以上 | 卒業後4年6カ月以上 |
短期大学 5年制高等専門学校 専門学校の「専門士」 |
卒業後5年以上 | 卒業後7年6カ月以上 | |
高等学校 専門学校の「専門課程」 |
卒業後10年以上 | 卒業後11年6カ月以上 | |
その他(最終学歴問わず) | 15年以上 | ||
ロ | 電気事業法による第一種、第二種または第三種電気主任技術者の免状交付を受けた者 | 6年以上 (交付後ではなく、通算の実務経験年数として) |
|
ハ | 電気工事士法による第一種電気工事士免状の交付を受けた者 | 実務経験年数は問いません |
2級電気工事施工管理技術検定第2次検定合格者は、下表の取り扱いになります。
1級1次検定受検に必要な実務経験年数 | ||||
---|---|---|---|---|
区分 | 最終学歴または資格 | 実務経験年数 | ||
指定学科卒業 | 指定学科以外卒業 | |||
二 | 2級電気工事施工管理技術検定第二次検定合格者 | 合格後5年以上 | ||
2級二次検定合格者後、実務経験が5年未満の者 | 短期大学 5年制高等専門学校 専門学校の「専門士」 |
上記イの区分参照 | 卒業後9年以上 | |
高等学校
中等教育学校(中高一貫校) 専門学校の専門課程 |
卒業後9年以上 | 卒業後10年6カ月以上 | ||
その他(最終学歴問わず) | 14年以上 | |||
ホ | 2級電気工事施工管理技術検定第二次検定合格者 | 実務経験年数は問わず
(ただし、第二次検定の受検はできない) |
1級2次検定の受検資格 |
|
---|
(参考:一般財団法人建設業振興基金施工管技術検定「令和3年1級電気工事士施工管理技術検定のご案内」より)
(監理技術者の指導をうけた場合などは必要な実務年数が短縮される場合もあります。詳しくは「受検の手引」をご確認ください)
完全未経験の人がチャレンジできるのは2級電気工事施工管理技術検定の1次検定まで。それ以降は働きながら実務経験を積む必要があります。
「2級1次検定合格だけでは意味がないのでは?」と思われるかもしれません。しかし、高校生や大学生でも取得できるため、卒業後に電気工事の施工会社へ就職したい人が2級技士補の称号を取ればアピールになるでしょう。
とはいえ電気工事施工管理技士は「電気工事の現場で経験を積んだ人がステップアップで取得を目指す資格」といった位置づけなのは確かです。
受検手数料と試験地
受検手数料も種目によって差があります。
電気工事施工管理技術検定は下表の通りです(2021年度)。
1級 | 2級 | ||
---|---|---|---|
第1次検定 | 第二次検定 | 第1次検定 | 第二次検定 |
13,200円 | 13,200円 | 6,600円 | 6,600円 |
他の種目については、国土交通省「技術検定制度」をご確認ください。
また、電気工事施工管理技士の試験地は 札幌・仙台・東京・新潟・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄 です。
施工管理技士の難易度
難易度も種目によって差がありますが、例えば令和2年(2020年)の電気工事施工管理技術検定の合格率は次のようになっています。
- 1級:「学科」38.1% 「実地」72.7%
- 2級:「学科」58.5% 「実地」64.1%
制度変更前の結果ではありますが、大幅に難易度が変わる可能性は少ないでしょう。
国家資格としては中級程度の難易度になり、基礎知識や現場経験があれば十分に突破可能なレベルといえます。
ただし試験回数が2級1次を除けば年1回と少ないため、計画的な勉強は必要です。
(出典:国土交通省より
「令和2年度1級建築・電気工事施工管理技術検定「学科試験」合格者の発表」
「令和2年度1級建築・電気工事施工管理技術検定「実地試験」の合格者の発表」
「令和2年度2級建築・電気工事施工管理技術検定「実地試験」の合格者の発表」
「令和2年度2級建築・電気工事施工管理技術検定「学科のみ試験(後期)」合格者の発表」)
電気工事施工管理技士を目指すなら日本エネルギー管理センターへ
施工管理技士は、工事の専門的な知識と経験を裏打ちするニーズが高い資格です。
その資格試験にあたる施工管理技術検定は、2021年度試験より新制度へ移行します。
- 「学科」「実地」が「1次」「2次」へ名称変更
- 「技士補」の新設
- 1次検定(元「学科」)の有効期限が無期限になる
- 1級1次検定の受検タイミングが前倒しできる
- 試験基準が少し変更になる
基本的には、受検生にとってポジティブな変更といえるでしょう。
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