電験三種(第三種電気主任技術者)は、ビルや発電所などの電気設備の保安・監督を行うための国家資格です。資格試験の難しさでも知られているため、勉強する価値があるのか気になる方も多いでしょう。

そこで本記事では、電験三種の年収について求人情報サイトや厚生労働省「jobtag」をもとに紹介します。資格取得を目指すにあたっての注意点についても解説しますので、電験三種を目指す方はぜひご一読ください。

関連記事:電験三種とは|仕事内容や試験概要、難易度を解説

電験三種の年収は400万〜500万円ほど

電験三種の資格保有者の平均年収は400万〜500万円ほどと言われています。日本の平均給与は458万円のため、おおよそ平均的な給与水準です。

ここで「求人情報サイトではもっと低い給与での募集もあるが?」と疑問に感じた方もいるでしょう。実際に求人情報サイトに掲載されている想定年収と求人の数を調べると、下図のようになります。

出典:執筆時点(2024年6月)の求人ボックスのデータを加工

求人情報サイトでの募集のボリュームゾーンは年収350万円〜400万円。たしかに電験三種の相場とされる年収より低い求人が目立ちます。

しかし注目すべきは、それ以上の年収帯でも広く求人が存在することです。

「電験三種」という資格は、ビル管理会社、電力会社、鉄道会社など幅広い企業で必要とされています。業界や職種によって資格保有者の仕事内容やポジション、基準となる給与水準が異なるため、募集年収にも幅が生じているのです。

フリーランスで働いている資格保有者や非公開求人の存在も加味すると、年収500万円以上も狙える資格であると推測されます。

電験二種・一種の年収

電験三種の上位資格にあたる電験二種と一種の年収について求人情報サイトを調べると、以下の傾向が見てとれます。

  • 電験二種:電験三種と比べて年収500万円〜の求人が増える
  • 電験一種:求人数は減るが年収800万〜の求人もある

電験三種と比べて、電験二種と一種は扱える電気工作物の電圧範囲が広くなり、大規模プラントなどの設備も扱えるようになります。資格の希少性に応じて年収帯も高くなると考えられます。

電験三種で年収1,000万円は可能なのか?

電験三種で年収1,000万円以上は可能なのでしょうか?結論を言うと可能ではありますが、簡単ではありません。

電験三種の資格を保有し、年収1,000万円を目指すルートは以下の2つが考えられます。

  • 大企業に就職し、マネジメント職を目指す
  • 実務経験を積み、電気管理技術者として独立する

電験三種を取得するだけでは難しく、仕事での責任やリスクを負う必要があるでしょう。

電験三種資格が活用可能な職種と年収

出典:(一財)電気技術者試験センター「令和4年度電気技術者試験受験者実態調査

電験三種の資格はさまざまな業種・職種で活用可能です。

電気技術者試験センターの調査によると、令和4年度の「電気主任技術者試験受験申込者(就業者)の勤務先」は割合が多い順に以下のようになっています。

  1. ビル管理・メンテナンス・商業施設保守会社 15.7%
  2. 電気工事会社 12.8%
  3. 電気機器製造会社 9.2%
  4. 電力会社 8.1%

厚生労働省「jobtag」を参考に、電験三種の資格が活用できる職種と年収について詳しくみてみましょう。

ビル施設管理

ビル施設管理とは、オフィスビルや商業施設、学校、病院、ホテル、マンションなどの設備を維持管理する仕事です。建物の電力設備をはじめ、空調・給排水・消防設備などを定期的に点検し、異常がないか確認します。

電験三種は電力設備の保守・管理に必要な資格です。よってビルの管理業務を請け負っているビルメンテナンス会社は、資格保有者の採用や従業員の資格取得支援を積極的に行う傾向があります。

  • 年収(全国平均):442.1万円
  • 月額賃金(全国平均):23.6万円

参考:jobtag「ビル施設管理」

電気技術者

電気技術者は、電気設備や機器の技術開発・改良・保守管理・更新工事などを行う仕事です。電験三種は電気工作物の保安・監督業務において活用できます。

電気技術者の代表的な勤務先としては、電力会社や鉄道会社、電気機器メーカーなどがあげられます。工業高校や理工系の学部を卒業後、それらの企業に就職し、働きながら電験三種を取得するといったケースも多いでしょう。

  • 年収(全国平均):688.2万円
  • 月額賃金(全国平均):28.5万円

参考:jobtag「電気技術者」

プラント設計技術者

プラント設計技術者は、その名の通りプラントの基本設計や詳細設計を行う仕事です。プラントエンジニアリング企業や建設会社は、電験三種の資格保有者を含め、さまざまな専門知識を持つ人材を採用しています。

大学の理工学部卒や修士課程修了者の比率が高い職種であり、資格のない状態で入社し、必要に応じて電験三種などの資格を取得する人も多くいます。

  • 年収(全国平均):612.4万円
  • 月額賃金(全国平均):27.7万円

参考:jobtag「プラント設計技術者」

発電所運転管理

発電所運転管理とは、火力発電や水力発電、原子力発電、風力発電といった発電所の運転と保守を行う仕事です。

勤務先は発電設備を保有している企業などで、設備の保守・監督を行う資格として電験三種が必要となります。

  • 年収(全国平均):580.4万円
  • 月額賃金(全国平均):25.3万円

参考:jobtag「発電所運転管理」

太陽光発電の設計・施工

太陽光発電事業を行う企業で発電設備の設計・施工を行う仕事です。建設会社のほか、電機・機械系の企業の関連部門が技術者を募集しているケースもあります。

有資格者しか行えない業務もあるため、電験三種の資格があると歓迎されます。

  • 年収(全国平均):603.9万円
  • 月額賃金(全国平均):33.1万円

参考:jobtag「太陽光発電の設計・施工」

電験三種に資格手当はいくら?

電験三種の資格保有者に資格手当を支給する企業もあります。手当の金額は企業規模や業種などによりますが、求人情報サイトを見ると月額8,000〜1,0000円が相場のようです。

第二種電気工事士で月額3,000〜5,000円、第一種電気工事士で月額5,000円〜8,000円が資格手当の相場ですので、電験三種は難易度の分だけ他の資格よりも高額な手当が支給されていると言えるでしょう。

電験三種はやめとけ?資格取得における注意点

電験三種について調べていると「電験三種はやめとけ」との意見も見かけます。その理由として多くあげられているのが、資格の取得難易度に対して収入アップの効果が薄い点です。

収入を上げたい方にとって、電験三種が即効性のある手段でないことは確かです。

ここでは、電験三種の資格取得を目指す際に知っておいたほうがよい注意点について紹介します。

  • 取得しただけで「転職して高収入」は難しい
  • 大規模設備を扱うには一種・二種が必要
  • 独立も可能だが経営センスが求められる

なお電験三種の資格価値については、以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

関連記事:「電験三種は意味ない」は誤解!資格のメリットと年収アップのコツを紹介

取得しただけで「転職して高収入」は難しい

高難易度の試験を突破し、無事に電験三種の免状を取得したとしても、すぐに高収入は得られません。多くの資格がそうであるように、電験三種も実務経験が重視されます

電験三種は未経験可の求人が多い資格ではありますが、実務経験のある方に比べると年収はワンランク下がってしまうでしょう。

また電験三種の資格を保有しているからといって、それだけで高収入の大企業に就職できるわけではありません。資格保有者を必要としている企業は幅広くありますが、大企業は新卒で採用した社員を教育する余力があるため、社内で電験三種の資格保有者を育成・確保できます。

大企業への転職を目指すなら、資格に加えて企業ニーズに合致した経験を有していないと難しいのが現実です。

大規模設備を扱うには一種・二種が必要

電験三種は、電気主任技術者資格の登竜門的な資格です。上位資格である一種、二種と比べて、保安監督できる範囲が「​​電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5000kW以上の発電所は除外)」と制限があります。

大規模な工場や産業施設、発電所、変電所のなかには電験三種では扱えない電圧のものも少なくありません。企業によっては「電験三種の資格保有者を募集しているが、電験二種・一種の保有者は歓迎する」としているところもあります。

電験三種に合格したら勉強が終わるわけではなく、職場や仕事内容により上位資格の取得が求められることもあるのです。

独立も可能だが経営センスが求められる

電験三種を取得し、実務経験など一定の要件を満たすと、電気管理技術者として独立が可能になります。独立する際は電気管理技術者協会などの業界団体に加入するのが一般的です。

ただし、協会のサポートを得れば誰でもうまくいくとは限りません。すべてのフリーランス(個人事業主)がそうであるように、独立して成功するには人脈や営業センスが求められます

失敗しても再就職しやすい点は電験三種の強みですが、独立して高収入を狙うのは簡単ではありません。

電験三種を目指すならエネルギー管理センターへ

電験三種の年収について解説しました。電験三種の資格保有者の年収相場は400万〜500万円ほど。日本の平均年収と同等か、それ以上を狙える資格と言えるでしょう。

年収を見て「資格の難易度の割に……」と感じた方もいるかも知れません。しかし、電験三種の最大の魅力は安定性と息の長さです。

再就職のしやすさと定年後の継続のしやすさを考えると、短期間で大きく稼げる資格ではないものの生涯年収は決して低くないと言えます。長く働ける仕事を希望する方は、前向きに取得を検討してはいかがでしょうか。

また日本エネルギー管理センターでは電験三種対策の講習会を開催しています。レベル別にクラスが分けられており、今のあなたにあったレベルの講習が選択できます。

  • 【初級クラス】「今から勉強を始めるけど、そもそも今まで電気に関わってこなかった」という方から「一度勉強したけど、基礎からもう一度基礎から勉強したい」方向け
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