電気工事士とは?第一種・第二種の違い、合格率、試験の概要と対策まで徹底解説
電気工事を行うための独占業務資格・電気工事士は、手に職がつく一生ものの資格として人気です。
電気工事士には第一種と第二種があり、携われる工事範囲や免状取得の条件などに違いがあります。
今回は、電気工事士について、第一種と第二種の違いやそれぞれの合格率、試験概要、試験の対策まで徹底解説します。これから電気工事士を目指そうと考えている人はぜひご一読ください。
目次
電気工事士とは?
電気工事士は、ビルや工場、住宅、インフラ設備などの電気工事を行う際に必要になる国家資格です。
電気工事士法で定められた独占業務資格(資格保有者のみ業務を行える資格)であり、その仕事内容は大きく次の2つにわかれます。
- 建築電気工事:建物の屋内外の配線工事、コンセントやスイッチの取り付け、冷暖房設備の設置など、建物における電気設備の設計・施工を行う
- 鉄道電気工事士:鉄道に関わる電気設備の施工や保守を行う。駅にある照明やモニターなどの設置や点検にも携わる
活用幅が広い国家資格ながら、電験三種などに比べれば難易度は高くありません。資格試験は年齢・学歴・職歴問わず誰でも受験できるため、手に職をつけたい人から人気があります。
電気工事士資格は2種類ある
電気工事士の資格は2種類あります。
- 第二種電気工事士
- 第一種電気工事士
この2つは携われる工事範囲が異なります。
工事の範囲 | 第二種電気工事士 | 第一種電気工事士 |
600V以下の一般用電気工作物 | 〇 | 〇 |
500KW未満の自家用電気工作物 | × | 〇 |
それぞれの仕事内容や年収についてもう少し詳しく見てみましょう。
第二種電気工事士とは
第二種電気工事士は、電力会社から600V以下の低電圧で受電する「一般用電気工作物」の工事が行えます。一般用電気工作物とは、一般家庭や小規模な店舗の屋内配電設備、小出力の発電設備などが該当します。
たとえば小規模店舗にケーブルを張り巡らせたり、コンセントを取り付けたりといった作業は第二種電気工事士の工事範囲です。
求人ボックスによると第二種電気工事士の平均年収は360万円(月収30.3万円から換算)。これは新人も含めた年収であり、実績と経験を積めば年収400〜500万円以上は狙えるでしょう。
第二種電気工事士は、試験に合格するだけで誰でも免状を取得できます。電気系国家資格の入門資格として「未経験から電気の業界に入りたい」という人におすすめです。
関連記事:第二種電気工事士とは?取得するメリットと試験の難易度や将来性を解説
第一種電気工事士とは
第一種電気工事士は第二種電気工事士の上位資格にあたります。
第二種の工事範囲のほか、500KW未満の「自家用電気工作物」の電気工事が可能です。具体的には、ビルや工場、病院といった大規模な施設の変電設備や分電盤、屋内外の配線などが該当します。
第二種電気工事士よりも、より高電圧で大きな電気設備が扱えると考えてください。
第一種電気工事士の試験も誰でも受験できますが、合格後の免状取得には3年以上の実務経験が必要です。また、第一種電気工事士として従事するためには5年以内ごとに講習を受講する義務があります。
気になる年収ですが、求人ボックスによると第一種電気工事士の平均年収は436万円(月収36.4万円から換算)ほどです。第二種と同様に、第一種も経験を積むことでより高年収を狙えます。
電気工事士になるには?資格取得までの流れ
電気工事士として作業に従事するためには、資格試験に合格後、免状を取得する必要があります。
試験申込〜資格取得までの流れを詳しく見てみましょう。
第二種電気工事士の試験申込〜免状取得までの流れ
第二種電気工事士の試験申込〜免状取得までの流れは以下の通りです。
- 受験申込
- 学科試験の受験 →合格
- 技能試験の受験 →合格
- 免状申請(実務経験は不要)
- 免状取得
第二種電気工事士の試験は年2回行われ、誰でも挑戦できます。また、試験に合格すれば実務経験がない人でも免状申請が可能です。
令和5年から学科試験にCBT方式が導入され、より柔軟に受験できるようになりました。CBT方式の概要はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:令和6年(2024年)第二種電気工事士の試験日程|申込方法や注意点も紹介
ちなみに電気工事の会社に就職するだけなら、第二種電気工事士の免状がなくても採用される可能性があります。若手が不足している業界のため、まずは見習いの立場で受け入れてから資格取得を支援するといった会社も少なくありません。
第一種電気工事士の試験申込〜免状取得までの流れ
第一種電気工事士の試験申込〜免状取得の流れは以下の通りです。
- 受験申込
- 学科試験の受験 →合格
- 技能試験の受験 →合格
- 免状申請(3年以上の実務経験が必要)
- 免状取得(5年以内ごとの講習受講が必要)
第一種電気工事士の試験は年1回行われます。第二種電気工事士資格がなくても受験できますが、試験合格後の免状申請には3年以上の実務経験が必要です。
試験の合格証に有効期限はないため、先に第二種と第一種の試験に合格してしまい、あとから実務経験を積んで免状申請する人もいます。
また、第二種を飛ばして第一種電気工事士だけ合格した状態であっても「認定電気工事従事者」の申請をすることで実務経験が積めます。
第一種電気工事士の実務経験についてはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:第一種電気工事士の実務経験は3年からに|経験の積み方や免状の申請方法も
電気工事士の難易度は?合格率の推移
第二種・第一種ともに電気工事士試験の科目は学科(筆記/CBT)と技能の2つです。まず学科試験が行われ、合格者のみ技能試験を受けられます。
国家資格としての難易度は高くありませんが、まったく対策せずに合格できる試験ではありません。また難易度は第一種電気工事士のほうが上です。
各試験の合格率を見てみましょう。
第二種電気工事士試験の合格率
第二種電気工事士試験の2021年〜2023年における合格率の平均は学科58.18%、技能72.16%です。
年 | 学科合格率 | 技能合格率 |
2021年 | 59.17% | 72.83% |
2022年 | 55.95% | 72.59% |
2023年 | 59.43% | 71.06% |
平均 | 58.18% | 72.16% |
(合格率は電気技術者試験センターが発表しているデータから、合格者÷受験者(≠申込者)で計算しています。また計算には年ごとの合計値を使用しています)
合格率に大きな変動がないことから、難易度は毎年ほぼ同じと考えてよいでしょう。一見すると学科試験のほうが難しそうに感じますが、技能試験に進めるのは学科試験合格者のみです。
学科に合格する知識があっても30%弱は技能試験で不合格になるため、気が抜けない試験と言えるでしょう。
第二種電気工事士試験のより詳しい合格率推移はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:第二種電気工事士の12年間の筆記・実技別合格率の推移|勉強に必要な期間や方法
第一種電気工事士試験の合格率
第一種電気工事士試験の2021年〜2023年における合格率の平均は学科57.79%、技能63.44%です。
年 | 学科合格率 | 技能合格率 |
2021年 | 53.53% | 67.03% |
2022年 | 58.22% | 62.73% |
2023年 | 61.63% | 60.57% |
平均 | 57.79% | 63.44% |
(合格率は電気技術者試験センターが発表しているデータから、合格者÷受験者(≠申込者)で計算しています)
第一種電気工事士においても、試験の難易度は毎年ほぼ同じくらいと言えます。ただ、第二種電気工事士よりは合格率は下がり、学科と技能を一発で合格する人の割合は35%ほどです。
電気工事士の試験概要
第一種・第二種試験には共通して以下の特徴があります。
- 受験資格はなく、年齢・学歴・職歴問わず誰でも受験できる
- 試験科目は学科と技能の2科目あり、両方の合格が必要
- 学科試験(筆記/CBT)は四肢択一で出題される
- 技能試験では試験会場で工作物を制作する(工具は持参)
- 技能試験の候補問題が事前に公表されている
第二種と第一種にわけ、試験について詳しく紹介します。
第二種電気工事士の試験概要
第二種電気工事士は上期・下期の年2回試験が実施され、受験申込期間はおおよそ以下の時期です。
- 上期試験申込:3月中旬〜4月上旬頃
- 下期試験申込:8月中旬〜9月上旬頃
学科と技能で試験時期は異なりますが、受験申込は一緒に行います。正確な試験日程については、公式発表され次第当サイトのトップページでお知らせしています。
【第二種・学科試験】 |
内容 |
受験資格 | なし
※誰でも受験可 |
試験方式 |
※どちらも四肢択一 |
問題数 | 50問(1問につき2点) |
合格基準 | 60点以上 |
試験時間 | 120分 |
試験範囲 |
|
試験日程 | <上期>
|
<下期>
|
|
試験会場 | 全国で受験可 |
受験費用 |
|
【第二種・技能試験】 | 内容 |
受験資格 |
|
試験方式 | 持参した工具により、出題された課題(配線図)を支給される材料で完成させる |
問題数 | 1問
※候補問題13問のうち1問を出題 |
合格基準 | 欠陥なく作品を完成させること |
試験時間 | 40分 |
試験範囲 |
|
スケジュール | <上期>
7月下旬頃 |
<下期>
12月下旬頃 |
|
試験会場 | 全国で受験可 |
受験費用 | ※学科試験の受験費用に含まれる ※学科免除の場合も受験費用は同じ |
学科試験をCBT方式で受験する場合は、決められた期間内に会場と日時を選択して受験します。筆記方式の場合、受験会場と試験日時は選択できません。
第二種電気工事士試験の具体的な申込方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:第二種電気工事士試験の申し込み方法|CBT方式についても解説
また筆記試験の過去の会場をこちらの記事で紹介しています。会場は毎年変わるため明言できませんが、参考にしてください。
関連記事:【2021年度】第二種電気工事士試験会場と過去の会場一覧|日程についても
第一種電気工事士の試験概要
第一種電気工事士の試験は年1回実施され、受験申込期間は6月中旬〜7月下旬頃です。
学科と技能で試験時期は異なりますが、第一種も受験申込は一緒に行います。正確な試験日程については、公式発表され次第当サイトのトップページでお知らせしています。
【第一種・学科試験】 | 内容 |
受験資格 | なし
※誰でも受験可 ※前回の学科試験合格者は免除措置あり ※免状取得には3年以上の実務経験が必要 |
試験方式 |
※どちらも四肢択一 |
問題数 | 50問(1問につき2点) |
合格基準 | 60点以上 |
試験時間 | 140分 |
試験範囲 |
|
スケジュール |
|
試験会場 | 全国で受験可 |
受験費用 |
|
【第一種・技能試験】 | 内容 |
受験資格 |
|
試験方式 | 持参した工具により、出題された課題(配線図)を支給される材料で完成させる |
問題数 | 1問
※候補問題10問のうち1問を出題 ※候補問題は試験センターHPを参照 |
合格基準 | 欠陥なく作品を完成させること |
試験時間 | 60分 |
試験範囲 |
|
スケジュール | 12月中旬頃
※申込期間は学科試験と同時 |
試験会場 | 全国で受験可 |
受験費用 | ※学科試験の受験費用に含まれる
※学科免除の場合も受験費用は同じ |
第一種電気工事士試験も学科はCBT方式と筆記方式を選択できます。CBT方式で受験する場合は、決められた期間内に会場と日時を予約してください。筆記方式で受験する場合、会場と日時は指定できません。
また第二種と同様に、第一種電気工事士も前回の技能試験で不合格だった人は学科試験が免除になります。免除を受けたい場合は受験申込の際に免除申請をしてください。
電気工事士試験は独学で合格できる?試験対策のポイント
第二種電気工事士と第一種電気工事士は、どちらも独学での合格が可能な試験です。ただし、以下の点に注意してください。
- 理系科目が苦手な人は早めに勉強をはじめる
- 工具を触った経験がない人は技能講習の受講を検討する
上記を踏まえて、独学で勉強するポイントを詳しく解説します。
合格に必要な勉強時間の目安
まったく基礎知識がない人が独学で合格を目指すなら、技能試験対策も含めて必要な勉強時間の目安は次の通りです。
- 第二種:120〜150時間
- 第一種:240〜300時間
電気工事の専門知識がある人、第二種合格後すぐに第一種を受験する人はこの半分くらいの勉強時間で済むでしょう。
過去の試験問題は一般社団法人 電気技術者試験センターのHPで公開されています。知識が足りているか不安な人は一度確認してみてください。
学科試験のポイントは過去問対策
学科試験では、第一種・第二種ともに過去問を使った試験対策が有効です。テキストでおおまかに試験範囲を把握したら、過去問を繰り返して出題傾向を掴みましょう。
また電気工事の経験がない人の多くは、複線図の問題で苦戦します。
日本エネルギー管理センターでは、筆記試験を突破するためのやさしい複線図の書き方を動画で公開しています。無料で視聴いただけますので、ぜひ参考にしてください。
また第二種電気工事士については、独学合格の方法についてこちらの記事で徹底解説しています。おすすめテキストや無料アプリも紹介していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:第二種電気工事士を独学で合格する勉強方法|おすすめテキストも紹介
電気工事士試験の難所は技能試験
第二種・第一種ともに電気工事士試験の難所は技能試験と言われます。
じつは電気工事士の技能試験は予想外の不合格が少なくありません。というのも、以下の落とし穴があるためです。
- 試験時間がシビア
- 欠陥が1つでもあると不合格
- 難易度が問題によって異なる
技能試験では、事前に発表されている候補問題のうちの1つが出題されます。問題は各試験会場で異なり、試験開始までどの問題が当たるかはわかりません。
候補問題をすべてマスターする必要があるため、学科試験で合格の手応えを得られた人はすぐに技能試験の準備をはじめましょう。
「工具の使い方から習得が必要な人」「前回の技能試験の不合格理由がわからない人」は講習会への参加もおすすめです。試験対策のプロが、工作のコツから欠陥判定を回避するポイントまでしっかり教えてくれます。当センターでも受講できますので、ぜひご検討ください。
また第二種電気工事士の技能試験対策については、こちらの記事で独学合格のポイントを徹底解説しています。
関連記事:第二種電気工事士の技能試験(実技)|独学で合格するポイントを徹底解説
電気工事士の関連資格について
電気工事士資格以外の電気系資格としては、以下のものがあげられます。
- 電気工事施工管理技士(1級・2級)
- 電気主任技術者(第一種〜第三種)
第二種電気工事士を足がかりとして電気の業界に入り、他の資格を取得して仕事の幅を広げる道もあります。とくに第三種電気主任技術者(電験三種)へのステップアップを目指す人は多いように見受けられます。
また、電気工事士は電気系以外の資格とも相性がよい資格です。
たとえば第二種電気工事士は「危険物取扱者 乙種4類」「2級ボイラー技士」「第三種冷凍機械」とあわせてビルメン4点セットと呼ばれ、未経験でビルメンテ業界を目指したい人に人気です。そのほか消防設備士と組み合わせても仕事の幅が広げられます。
ほかの資格についてはこちらの記事で紹介していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:施工管理技士の年収は?給料に差がでるポイントや資格のメリットなどを紹介
関連記事:消防設備士乙種6類とは?取得メリットや合格難易度、勉強のポイントを紹介
電気工事士を目指すなら日本エネルギー管理センターへ
手に職がつけられる国家資格として人気の電気工事士。とくに第二種電気工事士は、未経験でも試験に合格すれば免状取得が可能です。まさに電気系入門資格と言えるでしょう。
試験は四肢択一の学科試験と、実際に手を動かす技能試験の2科目です。第一種・第二種ともに試験の形式は同じですが、第一種は上位資格の分だけ難易度が上がります。
未経験の人は、まずは第二種電気工事士の取得を目指しましょう。
日本エネルギー管理センターでは、電気工事士を目指す人に向けた講習会を開催しています。
- 最短かつ最小の努力で合格を目指す「学科コース」
- 技能試験の候補問題を短期間でマスターする「技能コース」
- 通学での試験対策が難しい人に向けた「オンライン講座」 など
さまざまなコースで皆様の合格をサポートします。
受講生の合格率は第二種電気工事士90%以上、第一種電気工事士80%以上です!詳しい内容は以下からご確認ください。