特定の業種において新たに職長や監督の立場につく人は、法律により『職長・安全衛生責任者教育』の受講が義務付けられています。

この記事では、職長・安全衛生責任者教育の概要と受講方法、注意点について解説します。教育を受ける必要のある人はぜひ参考にしてください。

職長・安全衛生責任者教育とは?

職長・安全衛生責任者教育とは、労働安全衛生法(第60条)に基づき、特定の業種で新たに職長の立場になる人が受講する講習です。

名前のとおり『職長教育』と『安全衛生責任者教育』の2つをセットにした講習であり、2日間にわたって実施されます。

職長・安全衛生責任者教育の対象者

2つをセットにした講習会と書いた通り、本来は別々の講習会であり、講習の位置づけや対象者も異なります。それぞれの対象者は以下の通りです。

職長教育 安全衛生教育
下記の業種において、新たに職長の業務に就く人。

  • 建設業
  • 製造業(※)
  • 電気業
  • ガス業
  • 自動車整備業
  • 機械修理業
複数の下請け業者が入る混在作業現場において、元請業者が統括安全衛生責任者を選任しなければならない場合に、下請業者の安全衛生責任者として選任される人。
(※)ただし、以下のものは除く

  • 食料品・たばこ製造業(うま味調味料製造業および動植物油脂製造業を除く)
  • 繊維工業(紡績業および染色整理業を除く)
  • 衣服その他の繊維製品製造業
  • 紙加工品製造業(セロフアン製造業を除く)
  • 新聞業、出版業、製本業および印刷物加工業

(参考:労働安全衛生法施行令第19条、厚生労働省「安全衛生責任者」より)

職長教育とは

職長教育は、職長として作業員の安全と健康を確保するため、現場の進行管理や安全管理に必要な知識を身に着けることが目的です。

対象となる人は「作業中の労働者を直接指導または監督する者」と定められており、役職名が「職長」でなくとも対象者になります。例えば、下記のような立場の人です。

  • 班長
  • 作業リーダー
  • 主任
  • 監督 など

業務内容が現場での指揮・指導に該当すれば講習の受講が必要。万が一職長教育を終了していない人が職長の業務を行っていた場合、労働基準監督官から是正勧告を受けますので、必ず受講してください。

安全衛生責任者教育とは

安全衛生責任者は、複数の下請け業者が入るような作業現場で、元請業者の統括安全衛生責任者と連携・調整を行う立場の人を指します。

よって安全衛生責任者教育は、労働安全衛生規則(第19条)に規定された職務を理解し、現場の安全衛生管理に必要な知識を習得することが目的です。

労働安全衛生法(第16条)により、安全衛生責任者の選定と元請業者への通達は業者の義務となっています。教育を終了していない人が立場を担うと罰則があるので、職長教育と同様に必ず受講するようにしてください。

職長・安全衛生責任者教育は合わせて受講するケースが多い

建設業などの混在作業現場になりやすい業種の場合、2つの講習がセットになった『職長・安全衛生責任者教育』の受講が一般的です。

というのも、建設業では下請け業者の職長が安全衛生責任者を兼ねるケースが多いため。

講習に必要な時間も、職長教育にプラス2時間されるだけです。よって何か特別な事情がない限りは、2つセットでの受講をおすすめします。

職長・安全衛生責任者教育のカリキュラム

下記の14時間の内容を2日間にわたって受講します。

教育内容 合計14時間
作業方法の決定および労働者の配置に関すること 2時間
労働者に対する指導又は監督の方法に関すること 2時間30分
危険性または有害性などの調査およびその結果に基づき講ずる措置などに関すること 4時間
異常時における措置に関すること 1時間30分
その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること 2時間
安全衛生責任者の職務など 1時間
統括安全衛生管理の進め方 1時間

最後の2時間が安全衛生責任者教育で追加される部分です。

講習は座学が中心で、規定の内容を受講するのみです。試験やテストはないため、他の資格試験のように落ちる心配はありません。

とはいえ職長も安全衛生責任者も、現場作業員の安全と健康に関わる重大な責任を背負った立場です。居眠りなどの不真面目な態度が発覚した場合は、講習修了は認められません。

また遅刻や早退も認められず、どうしても抜ける場合は後で教育の補てんが必要になります。

職長・安全衛生責任者教育の受講方法

職長・安全衛生責任者教育の受講方法は以下の3つに分かれます。

  • 通学での講習会参加
  • 出張講習会
  • Web講義

教育は事業者の義務のため、社員個人の判断というよりは、会社の指示で受講するケースが多いでしょう。

各受講方法について詳しく解説します。

会場で受講する

講習会へ出向いて受講する方法です。平日の2日間で行われます。

講習費用の目安はテキスト込みで1万5,000円〜2万円ほど。

講習会の開催者としては、各地域の労働安全基準協会のほか、建設業労働災害防止協会のような各協会があげられます。講師の要件を満たしていれば、公共団体でなくても講習会の開催は可能です。

日本エネルギー管理センターでも、職長・安全衛生責任者教育講師育成講座を修了した講師による講習会を開催しています。詳しくは職長・安全衛生責任者教育講習会の紹介をご確認ください。

出張講習会を開催する

出張講習会とは、事業者の依頼を受けた講師が会社の会議室などで開催する講習です。対象者が複数人いるような比較的大きな法人がよく行う形式ですね。

料金は固定か、参加人数による従量課金制が多いでしょう(講師の交通費・宿泊費別)。

以下のような協会で出張講習を請け負っています。

  • 一般社団法人安全衛生マネジメント協会(15名以上50名まで)
  • 中小建設業特別教育協会(15名以上50名まで)
  • 安全教育センター(5名以上50名まで)

講師の都合がつけば土日祝日でも開催可能のため、平日に社員を受講させるのが難しい場合は出張講習会というのも1つです。

Web講義を受ける

職長・安全衛生責任者教育はeラーニングでの受講も認められています。

個人がパソコンで受講する形や、会議室などに集まって集団で受講する形など、その方法は主催する協会・団体でさまざまです。

日本エネルギー管理センターでも、講習会の会場へ直接来られない人へ向けて、Zoomウェビナーを開催しています。詳細は職長・安全衛生責任者教育講習会の紹介よりご確認ください。

 

なおWeb講義の場合、受講環境が要件を満たしていないと教育が無効になる可能性があります。詳しくは「職長・安全衛生責任者教育の注意点」で後述しますので、あわせてご確認ください。

職長・安全衛生責任者教育の注意点

ここからは職長・安全衛生責任者教育の注意点について紹介します。

5年ごとの再教育が求められる

職長教育も安全衛生責任者教育も更新の必要はありません。ただし、国が定める安全衛生教育等推進要綱により、定期的(おおむね5年ごと)、または機械設備などに大きな変更があったときには再教育が求められています。

再教育のカリキュラムは、建設業と製造業で以下のように示されています。

再教育カリキュラム(建設業) 合計5時間40分
職長などおよび安全衛生責任者として行うべき労働災害防止に関すること 2時間
労働者に対する指導または監督の方法に関すること 1時間
危険性または有害性などの調査およびその結果に基づき講ずる措置などに関すること 30分
グループ演習 2時間10分

(出典:厚生労働省「建設業における職長等及び安全衛生責任者の再教育」より)

再教育カリキュラム(製造業) 合計6時間以上
職長などとして行うべき労働災害防止および労働者に対する指導または監督の方法に関すること 基本項目:2時間以上

専門項目:必要な時間

グループ演習 2時間以上

(出典:厚生労働省「製造業における職長等に対する能力向上教育に準じた教育について」より)

対象は職長・安全衛生責任者教育を修了している人。講習は1日で、形式は講義とグループ演習です。

ちなみに、再教育を受けないからといって職長などの業務に制限でません。しかし現場の安全管理の面から考えると、指導・監督する立場の人の能力向上教育は必要性が高いといえます。

Web講義は要件を満たしているかチェック

職長・安全衛生責任者教育はWebでの受講も可能です。しかし、すべてのWeb講義・講座が認められるわけではありません。

2021年1月25日、厚生労働省からeラーニングに関する通達が発せられました。これによると、講習内容や講師が要件を満たした上で、以下の環境が必要とされています。

  • 教育時間が規定時間以上であると、教育を実施する側が担保できること(Webカメラでリアルタイムの受講状況を確認するなど)
  • 質疑応答ができる環境であること
  • 参加者同士でやり取りできる環境であること

Web講義・講座の場合、システムによっては倍速再生や別作業をしつつの聞き流しも可能になってしまいます。よってeラーニングによる教育効果を担保するために、きちんと「本人が規定時間の教育を受けましたよ」とわかる形の開催でないと、教育を修了したとは認めない指針が示されたわけです。

Webでの受講を考えている人は、上記の通達を踏まえ、基準を満たしているものを受講しましょう。

(参考:厚生労働省「インターネット等を介したeラーニング等により行われる労働安全衛生法に基づく安全衛生教育等の実施について」)

職長・安全衛生責任者教育は日本エネルギー管理センターでも受講可能

職長・安全衛生責任者教育は、おもに建設業や製造業において新たに作業者の指導・監督する立場になる人が受けるべき講習です。

受講方法は「講習会」「出張講習会」「Web講義」の3つ。テストなどはなく、14時間の教育をきちんと受ければ修了証が発行されます。

職長・安全衛生責任者教育は法律に基づいたものであり、教育を修了していない人が職長などの業務を行うと是正勧告などのペナルティを受けます。必ず受講するようにしましょう。

 

日本エネルギー管理センターでは、職長・安全衛生責任者教育の講習会を開催しています。通学・Zoomの両方で受講可能です。

興味のある人は、こちらの講習会紹介ページより詳細を確認してください。