施工管理は、さまざまな専門家が集まる建設現場において、各工程が計画通りに進むよう管理・監督する仕事。そして施工管理技士は、施工管理を専門とする国家資格です。

業界ニーズの高い資格のため、会社から取得を促されている人も多いのではないでしょうか?

この記事では、施工管理技士の概要や種類、ニーズ、資格としての難易度を解説します。これから施工管理技士を取得したい人も、新たに仕事へ就きたい人も、ぜひ参考にしてください。

施工管理技士とは

施工管理技士は、建設業法27条に基づいた施工管理技術検定を合格した人に与えられる国家資格です。施工管理技士の仕事は、四大管理と言われる下記の内容が軸になります。

  • 工程管理:工事の工期を守るためにスケジュールを調整する
  • 原価管理:予算内で完成するよう材料費や人件費を管理する
  • 安全管理:事故が発生しないよう安全な作業環境を確保する
  • 品質管理:発注者の求める品質を実現する

簡単にいうと、建設工事が計画通りスムーズに進捗するよう、さまざま面で管理・監督する仕事ですね。

また施工管理技士は1級と2級に分かれており、以下のような違いがあります。

  • 1級:2級の範囲に加え、特定建設業の営業所における「専任の技術者」、各現場に配置される「監理技術者」になれる
  • 2級:一般建設業の営業所における「専任の技術者」、各現場に配置される「主任技術者」になれる

1級のほうがより担えるポジションの範囲が広く、また取得難易度も上です。

 

なお2021年に施工管理技術検定の制度変更が行われ、検定合格者に与えられる称号に「技士補」が新設されました。制度変更に関しては下記の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

関連記事:「2021年、施工管理技術検定制度が見直しへ!変更点や検定内容まとめ

施工管理技士が必要とされる理由

施工管理技士は建設業界でニーズが高く、資格手当が出る会社も少なくありません。また転職にも有利です。

というのも施工管理技士の資格保有者は、企業側から見ても次のようなメリットがあるためです。

  • 「監理技術者」や「主任技術者」になれる
  • 「専任の技術者」になれる
  • 経営事項審査で加算される

「監理技術者」や「主任技術者」になれる

建設業法26条により、建設現場には「監理技術者」か「主任技術者」の配置が必要です。そして施工管理技士の資格保有者は、この監理技術者・主任技術者として認められます。

  • 監理技術者:建設工事の発注者から直接請け負った工事を施工するために4,000万円(建築一式は6,000万円)以上の下請契約を締結する場合、特定建設業の許可とともに「監理技術者」の配置が必要
  • 主任技術者:元請けや下請け、請負金額に関係なく、建設業の許可を受けたものが建設工事を行う場合は、現場に「主任技術者」の配置が必要

監理技術者を担える国家資格には、一級建築士などの他に1級施工管理技士が該当します。また主任技術者には、2級施工管理技士が入ります。

ここでポイントとなるのが、個人住宅を除く大部分の工事において請負金額が3,500万円以上(建築一式の場合は7,000万円以上)の場合、配置する技術者は「専任」でなければならない点です。

つまり規模の大きい複数の現場を同時に請け負いたいときは、複数の資格保有者が必要。

制度変更により専任緩和措置が取られたものの、まだまだ施工管理技士には法律に基づいたニーズがあるのです。

「専任の技術者」になれる

建設業の営業許可を受けるには、各営業所において、許可を受けたい建設業に関する特定の資格や経験を有した「専任の技術者」の配置が必要です。施工管理技士はこの専任技術者にもなれます。

どのような資格が専任の技術者に該当するかは、許可を得たい業種と、建設業許可の区分が「一般建設業」か「特定建設業」かで異なります。

  • 一般建設業:建設工事の発注者から直接請け負った工事について、4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)未満で下請契約する場合。または、工事を自社ですべて施工するか、下請けとしてだけ工事を請け負う場合
  • 特定建設業:建設工事の発注者から直接請け負った工事について、4,000万円(建築一式は6,000万円)以上の下請契約を締結する場合

一般建設業なら1級・2級施工管理技士が、特定建設業なら1級施工管理技士が「専任の技術者」に該当します。

経営事項審査で加算される

経営事項審査とは、公共工事の入札の際に行われる企業の審査のこと。公共工事を受注するには、この経営事項審査をクリアしなければなりません。

審査にあたっては、企業規模や経営状況とともに、「一定の国家資格を保有する技術者を何人保有しているか」も審査対象です。そして施工管理技士の場合は1級で5点、2級で2点が加算されます。

企業側からみても、施工管理技士の資格保有者の雇用はメリットが大きいわけですね。

施工管理技士の種類

施工管理技士は、建設業種別に7種類にわかれます。

種類 概要
土木施工管理技士(1級・2級) トンネルや道路、河川、上下水道といった主にインフラの設備に関する資格
建築施工管理技士(1級・2級) 住宅やマンション、ビル、商業施設など建物の建築工事に関する資格
電気工事施工管理技士(1級・2級) 変電・送電設備、照明設備などのさまざまな電気工事に関する資格
管工事施工管理技士(1級・2級) 空調設備、ガス配管設備、浄化槽などの配管工事に関する資格
造園施工管理技士(1級・2級) 学校、公園、道路、遊園地などの造園工事に関する資格
建設機械施工管理技士(1級・2級) 建設機械を使った工事に関する資格
電気通信工事施工管理技士(1級・2級) モバイル通信の基地局設置や、電波障害の解消、インターネットの工事に関する資格

扱える工事の内容が種類によって異なります。また土木・建築・建設機械については工事現場が似ていることもあり、一部でできることが重複しています。

施工管理技士の資格の難易度は?

施工管理技士の資格取得難易度はどれくらいなのでしょうか?結論からいうと「国家資格としての難易度はそこそこだが、受験資格が必要なので簡単に取得できる資格ではない」といったレベルです。

また種類ごとに試験が行われ、問題はもちろんのこと、試験を主催する試験機関も異なります。

種類ごとの難易度

検定の難易度は種類によって異なります。2020年の7種類の合格率を比較してみましょう。

なお施工管理技術検定は「1次検定」と「2次検定」の2段階で行われます。

1次検定はマークシート式、2次検定は主に記述式。60%以上正解で合格です。

1級施工管理技術検定 2020年の合格率 2021年の合格率
1次検定(学科) 2次検定(実地) 1次検定
土木 60.1% 31.0% 60.6%
建築 51.1% 40.7% 36.0%
電気工事 38.1% 72.7% 53.3%
管工事 35.0% 61.1% −−
造園 39.6% 41.0% −−
建設機械 20.3% 80.2% 26.6%
電気通信工事 49.1% 49.3% −−
2級施工管理技術検定 2020年の合格率 2021年の合格率
1次検定(学科) 2次検定(実地) 1次検定
土木 70.1% 52.7% 70.3%
建築 35.9% 56.7% 37.9%
電気工事 58.5% 64.1% 60.3%
管工事 62.2% 57.8% 56.0%
造園 58.3% 43.0% 52.2%
建設機械 38.8% 82.5% 54.7%
電気通信工事 63.9% 42.9% 52.2%

(※国土交通省のサイトから出典)

種類によって合格率はバラバラです。なかでも建築と建設機械は1次検定のハードルが高いといえるでしょう。

ただ合格率10%前後の電験三種や一級建築士などと比べると、国家資格としての難易度は中程度。きちんと対策を取れば届かないレベルではありません。

受検には実務経験が必要

施工管理技術検定には受検資格があります。

  • 2級1次:試験実施年度において満17歳以上
  • 2級2次〜1級2次:各検定で所定の実務経験が必要

例えば電気工事施工管理技術検定の場合、2級2次で最短でも1年以上、1級で指導監督的実務経験を1年以上含む上で最短でも3年以上です。

よって未経験者がキャリアチェンジで取得する資格というよりは、すでに業界で経験を積んでいる人がキャリアアップを目指して取得する資格になるでしょう。

電気工事施工管理技術検定の受験資格については、以下の記事でまとめています。

関連記事:「2021年、施工管理技術検定制度が見直しへ!変更点や検定内容まとめ

また他の種類については各試験機関ホームページをご参照ください。

施工管理技術検定の種類 試験機関
土木・造園・管工事・電気通信 (一財)全国建設研修センター
建築・電気工事 (一財)建設業振興基金
建設機械 (一社)日本建設機械施工協会

チャンスはほぼ年1回! 検定スケジュールについて

施工管理技術検定の試験は、2級1次検定のみ年2回、2級2次〜1級2次は年1回です。

例えば電気工事施工管理技術検定の場合、2021年の試験日程は以下の通りです。

電気工事施工管理技術検定 申込み期間 試験日程
1級 1次 2021年1月29日(金)~2月12日(金) 2021年6月13日(日)
2次 2021年10月17日(日)
2級 1次前期 2021年1月29日(金)〜2月12日(金) 2021年6月13日(日)
1次後期 2021年7月6日(火)~7月20日(火)
(インターネットは6月22日(火)から)
2021年11月14日(日)
2次 2021年11月14日(日)

(出典:(一財)建設業振興基金

また試験地は札幌・仙台・東京・新潟・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・沖縄の10地区です。

種類によって日程・試験地は変わるので、正確には各試験機関のサイトをご確認ください。

なお検定は「1次のみ」「2次のみ」と個別で受けることもできます。制度改正により、一次検定の合格が無期限有効となったため、2年以上にわけて計画的に取るのも1つの方法です。

電気工事施工管理技士を目指すなら日本エネルギー管理センターへ

慢性的な人出不足と高齢化が問題となっている建設業界において、施工管理技士はニーズが高い資格です。施工管理の仕事でキャリアアップを目指すなら、ぜひ取得しておきたい資格といえるでしょう。

 

電気工事関係の国家資格取得を支援する日本エネルギー管理センターでは、電気工事施工管理技術検定を目指す人に向けて下記の講座を開催しています。

  • 【二級】第一次、第二次検定対策講習会:2日間で過去の出題分析に基づき重要項目を中心に学びます。
  • 【一級】第一次検定合格すべり込み対策「虎の穴」:試験直前の総仕上げ講習会です。
  • 【一級】第二次検定対策講習会:1日で第二次検定対策に必要なポイントを学びます。また遠方の方へ向けてオンライン講座も用意しています。

働きながら取得を目指す人も多い資格のため、過去の出題傾向から「合格に直結する部分を重点的に」「最小限の努力で合格できるよう」支援します。

興味のある人は、下記リンクから詳細ページをぜひご確認ください。

電気工事施工管理技士(1級・2級)コース