消防設備士乙種6類とは?取得メリットや合格難易度、勉強のポイントを紹介
消防設備の点検や工事に関する国家資格・消防設備士。
その1つである消防設備士乙種6類、通称”乙6”は、消火器の点検・整備を担える資格です。
この記事では、消防設備士乙種6類の資格取得メリットや試験難易度、独学で勉強するポイントなどを紹介します。
なお消防設備士の他の種類について知りたい人は、こちらの関連記事をご覧ください。
関連記事:消防設備士の難易度は?受験資格や試験概要、注意点も紹介
目次
消防設備士乙種6類とは?
消防設備士は、消防設備の点検・整備・工事を行える独占業務資格です。
資格は甲種と乙種があり、さらに消防設備によって種類がわかれます。
まずは消防設備士乙種6類の概要と資格のメリットを解説します。
消防設備士免状は13種類ある
消防設備士の免状の種類は、対象となる消防設備ごとに甲種・乙種あわせて13種類あります。
- 1類(甲・乙):水系消防設備
- 2類(甲・乙):泡系消火設備
- 3類(甲・乙):粉・ガス系消火設備
- 4類(甲・乙):火災報知器
- 5類(甲・乙):避難・救援用設備
- 6類(乙):消火器
- 7類(乙):漏電火災警報器
- 特類(甲):特殊設備
(参考:一般財団法人消防試験研究センター「消防設備士試験 受験案内」より)
乙種は対象設備の点検・整備ができ、甲種を取得するとさらに工事にも対応できます。
消火器点検で不備が見つかった場合、新しい消火器に交換しますよね。工事が入る余地がないため、6類は乙種のみです。
なお消防設備士の資格取得後は、決められた期間ごとに講習会の受講が必要です。詳しくは下記の記事で解説していますので、合わせてご覧ください。
関連記事:消防設備士の難易度は?受験資格や試験概要、注意点も紹介
乙種6類は『消火器の点検・整備』に特化した資格
乙種6類は消火器の点検・整備に関する資格です。
消火器はマンションやビル、商業設備など多くの場所に設置されており、とくに以下の防火対象物は消防法によって消火器の設置が義務となっています。
建物の基準 | 例 |
延面積300㎡以上の建物 | 学校、図書館、博物館、美術館など |
延面積150㎡以上の建物 | 百貨店、旅館、共同住宅、工場など |
面積に関係なく設置する建物 | 病院、映画館、飲食店、養護老人ホームなど |
(出典:一般社団法人 日本消火器工業より)
防火対象物は、有資格者による6カ月に1回以上の点検と報告が義務付けられています。防火対象物の場合、万が一のときに消火器が使えないと被害が甚大になりますよね。よって点検するにしても、設置状況や消火器の状態を適切に判断できる専門知識が必要とされます。
防火対象物は日本全国どこにでもあり、またその数も膨大です。乙種6類は、消防設備士のなかでもとくに活躍の範囲が広い資格といえるでしょう。
乙種6類を取得するメリット
乙種6類を取得するメリットは主に3つあります。
- 需要が安定している
- 転職・就職に有利
- 資格手当がつく
前述した通り、有資格者の消火器点検を必要とする建物は多く、また今後も消火器の設置義務はなくならないでしょう。法律に支えられたニーズが常にある資格といえます。
また資格がないと仕事ができないため、とくにビルメンテナンスや消防・防火設備の点検会社への転職・就職が有利です。
さらに、多くの会社でおよそ2,000円〜3,000円の資格手当が支給されます。
第二種電気工事士と相性が良い
転職・就職においては、消防設備士乙種6類を単独で保有するよりも、他の資格と合わせたほうが効果的です。例えば”ビルメン4点セット”と呼ばれる以下の4資格を持っていると、応募できる求人の幅が広がります。
- 第二種電気工事士
- 危険物取扱者乙種4類
- 2級ボイラー技士
- 第三種冷凍機械責任者
とくに第二種電気工事士の資格と相性が良く、電気工事士と消防設備士をセットで優遇資格にしている募集が多く見つかります。
【A社】 (東京都) |
オフィスビルなどの設備管理スタッフ |
【資格・経験】 |
|
【勤務形態】 | 正社員、日勤 |
【給与】 | 月給例18万5,000円~27万円 |
【B社】 (愛知県) |
消防設備の点検・修復業務 |
【資格・経験】 |
|
【勤務形態】 | 正社員、日勤 |
【年収例】 | 300万円~470万円 |
第二種電気工事士は消防設備士甲種の受験資格にもなるため、学歴や実務経験で受験資格を満たせない人にもおすすめの資格です。
第二種電気工事士資格については、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
関連記事:「第二種電気工事士とは|仕事内容や向き・不向きについても」
消防設備士乙種6類の難易度は?過去の合格率推移
乙種6類は消防設備士の入門のような資格。難易度は高くありません。
過去の合格推移を見てみましょう。
乙種6類合格率 | 2021年 (7月まで) |
2020年 | 2019年 | 2018年 |
合格率 | 45.3% | 42.7% | 38.3 | 40.0% |
(出典:一般財団法人消防試験研究センター「試験実施状況」より)
乙種6類の合格率は40%前後。国家資格としては易しいほうだといえます。試験内容もひっかけ問題が少ないため、独学でも十分に合格できるレベルです。
逆にいうと、未経験の方が一夜漬けで受かるような試験ではありません。きちんと勉強して臨みましょう。
消防設備士乙種6類の試験内容
ここからは消防設備士乙種6類の試験について紹介します。
なお消防設備士乙種の試験には受験資格がありません。年齢制限もないため、小学生でも受験できます。
出題形式は筆記と実技
消防設備士試験は筆記と実技にわかれます。
- 筆記試験:四肢択一のマークシート方式
- 実技試験:写真やイラストを使った鑑別試験
試験時間は1時間45分です。
実技試験の鑑別とは、例えば消火器の写真をみて「この消火器の種類は?」という設問に記述式で答えるものです。
実技といっても実際に手を動かすわけではなく、筆記試験の延長のようなものだと考えてください。
といっても、なかなかイメージが難しいですよね。
過去問の一部が消防試験研究センターのサイトで公開されています。全類一緒になっているためやや見難いですが、問題の上に【6類】と書いてあるものが乙6の試験問題ですので、確認してみてください。
乙種6類の試験範囲と問題数
消防設備士乙種は、筆記が全30問、実技が5問出題されます。
乙種6類 | 試験科目 | 問題数 |
筆記 | 消防関係法令 | 10 |
基礎的知識 | 5 | |
構造・機能・整備 | 15 | |
実技 | 鑑別 | 5 |
- 消防関連法令: 暗記が必要な法律問題です。
- 基礎的知識:物理や化学の簡単な問題が出題されます。理系出身者は有利ですね。完全に文系の人も、出題パターンはほぼ決まっているので法則さえ覚えれば大丈夫です。
- 構造・機能・整備:消火器の構造に関する問題です。この範囲は記述式である「鑑別」と関係してくるので、ただ暗記するだけではなく、中身を理解できて用語も書けるように勉強しましょう。
試験には計算問題も出題されますが、手計算や暗算で十分なレベルです。なお電卓の使用は禁止されています。
合格基準は60%以上
試験の合格基準は以下の通りです。
- 筆記と実技の両方で60%以上
- 各科目40%以上
- 科目免除を受けた場合は、免除科目以外で上記の基準をクリアすること
つまり、消防関係法令と基礎的知識が満点でも、構造・機能・整備で5問しか取れていなければ不合格になるわけです。
また筆記試験で合格基準を満たしていなければ、実技は採点されません。
過去問で勉強する際は、全体の正答率に加えて各科目の合格ラインも意識しましょう。
関連資格で一部の科目が免除になる
消防設備士試験は、関連資格保有者に対して科目の一部免除制度があります。
例えば、すでに消防設備士乙種5類を持っている場合、乙種6類の「消防関係法令の共通部分」と「基礎的知識」が免除になります。
ただし、科目免除を使えば楽に合格できるわけではありません。
消防設備士試験の科目免除は「事故」が多いことで有名。というのも、科目の一部免除を受けてしまうと、残りの問題の配点が上がってしまうためです。
例えば「基礎的知識」の5問が免除になった場合、残り25問の60%、15問以上を正答しなければなりません。加えて試験時間も15〜30分短縮されます。
もし免除科目が確実に取れる問題で、残り科目に自信がない場合、科目免除を受けないほうが有利です。免除になる資格を保有していても、本当に一部免除を受けるべきかはよく考えて決めてください。
試験スケジュールと受験費用
消防設備士乙種6類の試験スケジュールは都道府県によって異なります。試験回数はおおむね年2〜4回ですが、これも都道府県によって差があります。
例えば2021年の東京都の試験は、4・6・8・10・12月の計5回です。一方で隣の神奈川は10月試験のみ(参考:消防試験研究センターより)。
他県での受験も認められているため、隣県のスケジュールも確認して都合のよいエリアで申し込みましょう。
なお消防設備士乙種6類の受験費用は3,800円です。書面または消防試験研究センターのサイトから申し込みできます。
消防設備士乙種6類は独学でも合格可能!勉強のポイント
乙種6類の勉強時間は、毎日コツコツ30分〜1時間勉強して約2カ月が目安です。
ここでは、独学で合格を目指す人に向けて勉強のポイントを紹介します。
過去問を繰り返そう
乙種6類はひっかけ問題が少なめで、また過去と似たような問題が出題される傾向にあります。さらに科目の範囲も狭く、筆記はマークシート方式となれば、とにかく過去問を繰り返してパターンを暗記する勉強方法が王道です。
- 参考書を読む
- 過去問を解きつつ、不明な部分は参考書を読み直す
- 苦手な部分を把握して、重点的に復習する
最初の1カ月は科目毎に1〜3に取り組み、残り1カ月は過去問を通しで解く勉強方法をおすすめします。
また乙種6類は、筆記の難易度はそう高くない一方、実技で落ちやすい試験です。テキストを購入する際は実技試験の解説がわかりやすいものを選びましょう。
おすすめのテキスト
資格試験のテキストは相性があるため、書店で中身を確認してからの購入をおすすめします。ここではわかりやすいと評判の参考書と問題集を紹介しますので、探す際の参考にしてください。
- 消防設備士第6類/公論出版
- 試験にココが出る! 消防設備士6類 教科書+実践問題/インプレス
- 本試験によく出る! 第6類消防設備士問題集/弘文社
消防設備士乙種6類の試験対策なら日本エネルギー管理センターへ
消防設備士乙種6類は、ビルメンテナンス業界などでニーズが高く、また他の資格とも相性のよい資格です。
受験資格がなく、国家資格としての難易度も高くないため、独学でも合格可能。コストパフォーマンスに優れた資格といえるでしょう。
とはいえ「1人でコツコツ勉強するのが苦手」「忙しくて勉強する余裕がない」という人もいますよね。
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